大浜騒動1-4 資料を読む 序


服部純は、旧菊間藩大浜出張所(現在の愛知県碧南市を中心に
する地域を所轄する役場)に明治3年に赴任した若い意欲あ
ふれる役人であった。
 国学を学び、明治維新政府の方針を革新的政策として熱心
に実現しようとしていた。
 三河真宗繁盛の地である。その長官の目には、着任地の
人々が培ってきた文化や風土を理解できようもなく、ただ
古い因習がはびこったところで、啓蒙し改革せずにはおけな
い人民と映ったであろう。
 若き理想主義に燃える、有能な一官吏。
 維新政府の事件後の質問には、たくさんの真宗寺院の僧侶
によってがんじがらめになった固陋なる人民を開明し、地域
社会を改革せずにはおかない、という着任当時の熱い思いを
語っている。
非常に狭い地域を所轄とする役所ではあるが、明治維新政府
をバックに持ち、その政府自体どういう方針なのかさだまら
ないという状況であった。
そんな中で実行した彼の”革新的”施策が、地域の人々にお
おきな不安を呼び起こすことになる。